昔はそれほど好きな方ではなかったのですが。

破天荒な歌舞伎役者が、結婚をし、子を授かり、家族が揃って日本文化を守るために前を向いて邁進している。

この姿は、程度の差はかなりあるのですが、私も同じように感じております。

私たちは、マスメディアへの露出など皆無で、プライベートを事細かに公表しなければならない訳では無いので、とても安らかに生活できるのですが。

文化を守り伝えることは、難しくもあり、楽しくもあり。

直系の者にしてみれば至極当然ではあるものの、その家族となるとまた少しとらえ方も違ってくるでしょうに。

とくに、お嫁に来てくれた女性にとっては、同業者ならいざ知らず全く畑違いの人生を送ってきていたりすると、寝ても覚めても、何をしていても伝統と向き合わなければいけないという心持ちは理解しがたいところがあるでしょう。

家族親族のみで伝統を継承するには、少し難しい時代になっているのは確かです。

 

命と向き合うことは神道家としては当然。

さて、世間一般にがんにはステージという区分がある事は、広く知られていることです。

がんの種類によってはaやbなどさらに細かく分けられたりもしますが、20年前と比べても一般の方々が持つがんへの知識量は格段に増えていると言って間違いありません。

この様な世の中であって、がんとどう向き合うのかというのはとても大切な命題であると考えております。

日本人の死亡原因一位となっているがんだからこそ、この命題には真摯に向き合い、また、私の祖父が肺がんで亡くなったことから、自分を含め、命の限りが垣間見える際にどのように受け入れるかというところを考えることは、神道人として不可解ではありませんでした。

命と向き合い、考え、さらに一つ一つ答えを出すことは、今を生きることがどれほど数奇で大切な瞬間であるかを考えることと同義ですからね。

一般的ながんへの知識を持ったうえで、有名な歌舞伎役者の方のご家族を遠くから眺めたときに、伝統芸能を伝える家族の在り方を、涙ながらに感じないわけには行きませんでした。

 

話題のご家族へと思いを向かわせる。

破天荒極まりないやんちゃ坊主。

その小僧は日本有数の歌舞伎一家の御曹司。

しかしある時、まったく伝統芸能に関係の無いお嫁さんを貰う。

このお嫁さんのおかげで、家庭を育む意義を知り、身を正して芸事と向き合う大切さを再確認された。

だからこそ一家は大きく飛躍し、歌舞伎の何たるかが広く世間一般に知られ、しかし芸事を家制度で継承する大変さを広める。

御曹司個人に留まらず、歌舞伎界、日本の芸事に携わる者たちへの大きな転換を担ったのが、ここに嫁がれたお嫁さんであった。

そのお嫁さんが、現在がんとの闘病生活を1年以上も送っている。

これが一体どれほどの大ごとか、少しご理解いただけたであろうか。

一人の元アナウンサーの女性が戦っているだけ、ではないのです。

 

そして同様に、闘病とはその人だけで戦うものではない。

がんとの闘いは、家族親族関係者が戦列を整え立ち向かうものです。

たった一人が矢面に立たされているのではありません。

もちろん、まさに病気と闘うのは個人であり、病気の痛みや辛さを他者が共有することはできません。

だからこそ、本人への想いが強ければ強いほど、周りの人間は心が辛く、痛く、締め付けられるものなのです。

しかし、本人と周りの人間は、お互いがお互いを大切にし合うからこそ、辛いのに、痛いのに、笑顔で語り合います。

近しい親族には痛みの中で暴言を吐いてしまうのに、捨て置けず、愛し、振り返り、笑顔を作るのです。

 

綺麗ではないでしょう。

美しくもないでしょう。

 

ただただそこには、情が大きく硬く繋がれている、それだけです。

 

 

誰でも知っている。

今回の記事は、だれでも知っていて、常識で、口に出すことではない。

そう考える方もいらっしゃるでしょう。

そういったお考えを知っているのに、なぜこの記事を書く気になったか。

これは簡単に、知らない人もいるから、です。

今回の歌舞伎役者さんに関して、闘病生活で失われているものが日本芸能の歴史を揺さぶる大事だったので、もしかすると一般の方には程遠い夢の国のお話、と考えられる方も多いのではないか、と感じたのです。

 

そんなことはありません。

死と真正面から向き合うことになるがんとの闘いは、だれにでも訪れる可能性があり、もし戦いへと突き落とされれば、予備知識や心構え無くしてはとても対処が辛い戦になるのです。

だからこそ、がんへの知識と、闘病への心遣いを、どんな方でも持っていただきたい。

 

深夜のニュース番組で、この歌舞伎役者一家を切り取って放送されてらっしゃいました。

ニュース番組であるにもかかわらず、番組冒頭30分をかけて。

尖閣付近に他国船が来るという国家の一大事を跳ね除けての放送。

しかしその番組中で、歌舞伎役者さんが言葉を紡がなかった、病気のステージに関しては言及しない姿勢。

この一件に関しては、この番組が愛情を持って一家を報道していたことに間違いはありません。

そしておそらくこれからも。

元アナウンサーであるお嫁さんが、過去キャスターとして勤めていたから、というところがあるからでしょうが、それでも人間味のある30分に感じられました。

 

「 人はいずれ死ぬ 」 

という言葉がありますが、

私は、

「 人は今を生きている 」

という言葉の方が好きです。

 

肺癌には画期的な新薬も登場しており、医学の進歩も著しい。

だからこそ、神道学も進歩しなければ。

人間心理学も進歩しなければいけません。

 

いのちと向き合う。

 

この教えを、少し大切にしたいのです。

 

 

まとめてみる。

今、身近にがんと闘ってらっしゃる方は、5人を下らない。

どの方も、生きることへ真面目に向き合ってらっしゃるようです。

しかし、私本人からは直接身の回りのお世話ができるほどではないので、ご家族御親族などを通じてお話を聞く程度です。

勿論、回復されてらっしゃる方からは直接お話を聞けておりますが。

元気に見えても、戦いの真っただ中である方も、いらっしゃいますし。

そういった方と向き合う表情を、今回歌舞伎役者さんは教えてくださりました。

彼の開設してらっしゃるブログを見ても、過去のワイドショーからは想像できない子煩悩さ。

いのちを伝えることの大切さを、皆様から教えていただいております。

 

そして、教わっている事実を、何処かの誰かに伝えることは、今の対人関係の希薄さから鑑みるに、とても重要なことなのだろうと考えます。

 

まとまらなかったし、夜も遅いので、ひとまずこれをアップして寝ます。

 

病床にて大変であると理解しておりますが、またあなたとお話しできる事を、心より望んでおります。