始めて行われた拝殿内に鷹を招いての祈願祭

お手製の止まり木までご準備いただきました

一昨年年末頃でしょうか。

鷹匠としての日々を送る上で、お浄めのお祓いを受けたいと申し出を賜ったのは。

以降、金沢市での鷹匠という職業の流れなどを素人ながらお調べさせていただいたりして、なんとか祝詞を書き上げたりしていたのが昨年お正月過ぎ。

平成28年1月25日に初めての鷹匠安全祈願祭を春日神社でご奉仕申し上げました。

全てが初体験でしたので、どこまで養生すれば良いのかわからずオオゴトになっていました。

寒かろうとストーブを焚いていたりしましたが、寒い方が良いとお教え戴いたのもこの時です。

始めて行われた拝殿内に鷹を招いての祈願祭
始めて行われた拝殿内に鷹を招いての祈願祭

同年11月21日に再び揃ってご参進戴き、その冬の活動全般と鷹達の安全をご報告・ご祈願申し上げ、紅葉の中飛び交う大鷹やハリスホークの姿を見ていた覚えがございます。

平成28年 秋の鷹匠安全祈願祭後の境内
平成28年 秋の鷹匠安全祈願祭後の境内

年初には大鷹だけだったのに、新しくハリスホークなる新人(鷹)さんが増えており、びっくりしました。

また、この際には計4羽の猛禽類の皆様が参進され、これまで読み上げたことの無かった「ちょうげんぼう」や「アフリカワシミミズク」などの言葉が祝詞の中に含まれました。

このようにお参り戴くたびに増えていった鷹達ですが、その都度鷹匠さんが止まり木を自作され、拝殿の中で太鼓を打ち鳴らしても大丈夫なように言い聞かせて下さっておりました。

神社側も準備に心がけましたが、それ以上にお参り戴く匠や鷹等には緊張感のある信頼関係の構築にご尽力戴いていることと存じます。

そして本日も、神前に上がるのだから、と、膝附を模した止まり木を本日参進される鷹の数分あつらえて戴いておりました。

拝殿の中に集った4羽の猛禽類の皆様は膝附の止まり木に
拝殿の中に集った4羽の猛禽類の皆様は膝附の止まり木に

素人として頭に浮かんだのは、よくケンカせずにいるなぁ、と。

 

一念を柱として

ペットとしての愛情だけでは無く、主従を定めた信頼関係というところは、一朝一夕で備わるものではありません。

人間は面従腹背なんて当たり前ですが、飲みニュケーション等で培われる上司と部下の関係などを経て混濁とした関係を脱却しなんとか組織が組織らしく形成されてゆくのですから、言葉の通じ無い鷹等と如何に心を通わせるかというのは一般人にとっては想像だに出来ません。

特に、簡素簡略な人間関係の構築すら苦手とする私禰宜にとっては、笛だけで指示に答えてくれる鷹達が人知を越えた存在に見えたりもします。

今回お参り戴いた、金沢Hawk Wingの皆様方は、当神社に足を運ばれた当初から「小学校などでこの放鷹術を実演してみたい。」とおっしゃってらっしゃいます。

話を伺うと、ただ単に鷹って頭良いんだよってことを言いたいのではなく、生きる者が食事をすることが如何に大変で、如何に大切で、そして食に係わる人々や家族への想いをもう一度深く考えてみて欲しい、とおっしゃっていました。

 

小学生等がテレビを見ているだけで、お父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃんが、ご飯を作って並べてくれる。

これでは食へのこだわりや感動を教えてゆけるのだろうか。

形のないものへの価値を、子供達は食から学ぶことが出来るのに、なぜ毎日必ず巡ってくるその機会をどうしたら見つめ直せるだろうか。

 

春日神社へ詣でられた鷹匠さん方は、こういった事を真剣に考え、御神前へお参りするほどに一つ信念を柱に据えた方々であると感じております。

 

私どもには、鷹かっこいいでしょ、なんて笑顔で話して下さいますが、鷹匠の皆様と彼らの腕を宿り木とする鷹達は、当初よりも凜々しさを増していらっしゃるように感じております。

ご祈祷を終えた皆様(アフリカワシミミズクさんは写真の外)
ご祈祷を終えた皆様(アフリカワシミミズクさんは写真の外)

 

本日の奉納演技は

  1.  千本鳥居 (赤鳥居を鷹がくぐり抜けます。)
  2.  赤鳥居渡り (稲荷社前の赤鳥居にとまります。)
  3.  振り替え演技 (鷹匠と人との間を指示通り飛び渡ります。)
  4.  春日神社大鳥居渡り (春日神社参道より大鳥居に向けて大きく滑空します。)
  5.  関係者との振り替え演技
  6.  一般観覧者との振り替え演技

といった行事でした。

赤鳥居をくぐり抜けると、観客の皆様から大きな拍手も上がり、以降演技事に歓声を浴びていらっしゃいました。

そして赤鳥居の上にとまりまた鷹匠の元へと舞い戻るところも見られました。(この後の演技で、赤鳥居への意識が強く出過ぎたのか、真面目にやってるのになんか違うとスネておりました。)

赤鳥居から鷹匠の元へと戻るハリスホークさん
赤鳥居から鷹匠の元へと戻るハリスホークさん

また、春日神社の正面石鳥居から手水舎前までを飛び交う渡りにも目を見張るところがあり、笛の音が合図だと教えるだけでも大変だっただろうと驚かされました。

鳥居に向かって羽ばたくハリスホークさん
鳥居に向かって羽ばたくハリスホークさん

この後、神社関係者や観覧の皆様を交え、ハリスホークさんが合図を受けて人間の腕から腕へと飛び交っておりました。

観客の見つめる中、物怖じせず目標に向かってくれました
観客の見つめる中、物怖じせず目標に向かってくれました

 

今回観覧戴いた皆様の中には、猛禽類の鳥たちを見ることが初めてという方も多かったことでしょう。

我々人間が、平和に何不自由なく食事をし、生活をしている側では、食物連鎖の生態系が絶えることなく繋がっていることを、一時でも感じて戴けたらと願います。

 

ご飯はあるものだとして考えを留めてしまわずに、なぜ食事が出来るのか、その食事は一体どういった経緯を経ているのか、誰が作ってくれているのか、そして、食事をすることで、幸せになって戴きたい。

 

春日神社では、今後の金沢HawkWingの皆様のご活躍を心よりお祈り申し上げますと共に、食から繋がる人々の絆をお伝え出来ればと考えております。

 

 

本日ご参列戴きました皆様、小雨ぱらつく中ではございましたが、皆様のおかげで演技の時間は強い雨に降られることはありませんでした。

また何かの機会に、春日神社や氏神様へと足をお運び戴き、今の世にも残る自然を、一時でも良いので感じて下さると幸いです。

得意の千本鳥居を最後にも見せてくれたハリスホークさん。
得意の千本鳥居を最後にも見せてくれたハリスホークさん。
禰宜自作の止まり木にとまって下さったハリスホークさん。禰宜自作の止まり木にとまって下さったハリスホークさん。
禰宜自作の止まり木にとまって下さったハリスホークさん。