白山市横江に鎮座する宇佐八幡神社は、地域氏子崇敬者の皆様から温かいご奉賛を弛まず受けている、日本の神社然たるお社です。
そのお社には、つい数年前まで恒例となっていた年中行事がありました。
それは、地域活動と社会奉仕のさらなる融和育成に関心を持ち、老若男女が皆共に集まり成長していって欲しいとの想いを形にしていらっしゃった、横山國夫さんによる子供神輿奉納です。
この横江という集落には、その昔それほど多くの子供が居たわけではありませんでした。
しかし、近代に向けて住民の家族親族も多くなり、また余所から移住して横江の町民に成られる方も増えてくると、子供達の声で神社境内があふれる日々も少なくなくなっていったのです。
また、古くから行われている夏の虫送りにも大変関心が高く、人々の結束はさらに高まっていくこととなりました。
そして、周辺地域の住宅化も進む中、横江の町には子供神輿が無いと嘆かれる時代がついに来たのです。
これを一大事と汲み取った横山さんが、平成7年にお手製の神輿を、その年取れたお米の稲わらを用いて作り始めてくださったのです。
毎年毎年新しいものになるその神輿は、子供達にも神社の精神の一つである「常に清浄であること」を教えるには、正にうってつけでありました。
式年遷宮の精神にもつながるこの心意気は、放っておいたら新しくなるのではなく、人の奉仕の精神によって物事が良い方向に動かされるのだ、と、子供達を始め関係者等が認識できたのです。
ただ、今ではご本人のお疲れとも相まって、これは行われておりません。
平成22年を最後に、横山さんご自身の高齢のためとのご進言により、この年までの御奉納となったのです。
至極残念ではあります。
が。
横山さんは、疲れたからおしまい、と言える方ではありませんでした。
子供達に神輿の楽しみを忘れて欲しくないという意識は高く、また地域の皆様から強い関心を集めていた行事だとご自身が理解していらっしゃったのでしょう。
なんと翌年の平成23年秋には、横山さんが曳山式の子供神輿を御奉納されたのです。
北國新聞の平成23年10月11日付けにも掲載される程の偉業でありました。
神社関係者はじめ氏子崇敬者から関係諸氏に至るまで強く感銘を受け、これを暖かく承り、しかし保管管理する場所は町内有志が神社社務所横に併設する、となりました。
現在でも、毎年秋祭り前後の休日早朝に、宇佐八幡神社にて子供会と子供達が集まり、子供神輿発御式を行った上で町内を巡っております。